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Podのオーバーヘッド
Kubernetes v1.24 [stable]
PodをNode上で実行する時に、Pod自身は大量のシステムリソースを消費します。これらのリソースは、Pod内のコンテナ(群)を実行するために必要なリソースとして追加されます。Podのオーバーヘッドは、コンテナの要求と制限に加えて、Podのインフラストラクチャで消費されるリソースを計算するための機能です。
Kubernetesでは、PodのRuntimeClassに関連するオーバーヘッドに応じて、アドミッション時にPodのオーバーヘッドが設定されます。
Podのオーバーヘッドを有効にした場合、Podのスケジューリング時にコンテナのリソース要求の合計に加えて、オーバーヘッドも考慮されます。同様に、Kubeletは、Podのcgroupのサイズ決定時およびPodの退役の順位付け時に、Podのオーバーヘッドを含めます。
Podのオーバーヘッドの有効化
クラスター全体でPodOverhead
のフィーチャーゲートが有効になっていること(1.18時点ではデフォルトでオンになっています)と、overhead
フィールドを定義するRuntimeClass
が利用されていることを確認する必要があります。
使用例
Podのオーバーヘッド機能を使用するためには、overhead
フィールドが定義されたRuntimeClassが必要です。例として、仮想マシンとゲストOSにPodあたり約120MiBを使用する仮想化コンテナランタイムで、次のようなRuntimeClassを定義できます。
apiVersion: node.k8s.io/v1
kind: RuntimeClass
metadata:
name: kata-fc
handler: kata-fc
overhead:
podFixed:
memory: "120Mi"
cpu: "250m"
kata-fc
RuntimeClassハンドラーを指定して作成されたワークロードは、リソースクォータの計算や、Nodeのスケジューリング、およびPodのcgroupのサイズ決定にメモリーとCPUのオーバーヘッドが考慮されます。
次のtest-podのワークロードの例を実行するとします。
apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
name: test-pod
spec:
runtimeClassName: kata-fc
containers:
- name: busybox-ctr
image: busybox:1.28
stdin: true
tty: true
resources:
limits:
cpu: 500m
memory: 100Mi
- name: nginx-ctr
image: nginx
resources:
limits:
cpu: 1500m
memory: 100Mi
アドミッション時、RuntimeClassアドミッションコントローラーは、RuntimeClass内に記述されたオーバーヘッド
を含むようにワークロードのPodSpecを更新します。もし既にPodSpec内にこのフィールドが定義済みの場合、そのPodは拒否されます。この例では、RuntimeClassの名前しか指定されていないため、アドミッションコントローラーはオーバーヘッド
を含むようにPodを変更します。
RuntimeClassのアドミッションコントローラーの後、更新されたPodSpecを確認できます。
kubectl get pod test-pod -o jsonpath='{.spec.overhead}'
出力は次の通りです:
map[cpu:250m memory:120Mi]
ResourceQuotaが定義されている場合、コンテナ要求の合計とオーバーヘッド
フィールドがカウントされます。
kube-schedulerが新しいPodを実行すべきNodeを決定する際、スケジューラーはそのPodのオーバーヘッド
と、そのPodに対するコンテナ要求の合計を考慮します。この例だと、スケジューラーは、要求とオーバーヘッドを追加し、2.25CPUと320MiBのメモリを持つNodeを探します。
PodがNodeにスケジュールされると、そのNodeのkubeletはPodのために新しいcgroupを生成します。基盤となるコンテナランタイムがコンテナを作成するのは、このPod内です。
リソースにコンテナごとの制限が定義されている場合(制限が定義されているGuaranteed QoSまたはBustrable QoS)、kubeletはそのリソース(CPUはcpu.cfs_quota_us、メモリはmemory.limit_in_bytes)に関連するPodのcgroupの上限を設定します。この上限は、コンテナの制限とPodSpecで定義されたオーバーヘッド
の合計に基づきます。
CPUについては、PodがGuaranteedまたはBurstable QoSの場合、kubeletはコンテナの要求の合計とPodSpecに定義されたオーバーヘッド
に基づいてcpu.share
を設定します。
次の例より、ワークロードに対するコンテナの要求を確認できます。
kubectl get pod test-pod -o jsonpath='{.spec.containers[*].resources.limits}'
コンテナの要求の合計は、CPUは2000m、メモリーは200MiBです。
map[cpu: 500m memory:100Mi] map[cpu:1500m memory:100Mi]
Nodeで観測される値と比較してみましょう。
kubectl describe node | grep test-pod -B2
出力では、2250mのCPUと320MiBのメモリーが要求されており、Podのオーバーヘッドが含まれていることが分かります。
Namespace Name CPU Requests CPU Limits Memory Requests Memory Limits AGE
--------- ---- ------------ ---------- --------------- ------------- ---
default test-pod 2250m (56%) 2250m (56%) 320Mi (1%) 320Mi (1%) 36m
Podのcgroupの制限を確認
ワークロードで実行中のNode上にある、Podのメモリーのcgroupを確認します。次に示す例では、CRI互換のコンテナランタイムのCLIを提供するNodeでcrictl
を使用しています。これはPodのオーバーヘッドの動作を示すための高度な例であり、ユーザーがNode上で直接cgroupsを確認する必要はありません。
まず、特定のNodeで、Podの識別子を決定します。
# PodがスケジュールされているNodeで実行
POD_ID="$(sudo crictl pods --name test-pod -q)"
ここから、Podのcgroupのパスが決定します。
# PodがスケジュールされているNodeで実行
sudo crictl inspectp -o=json $POD_ID | grep cgroupsPath
結果のcgroupパスにはPodのポーズ中
コンテナも含まれます。Podレベルのcgroupは1つ上のディレクトリです。
"cgroupsPath": "/kubepods/podd7f4b509-cf94-4951-9417-d1087c92a5b2/7ccf55aee35dd16aca4189c952d83487297f3cd760f1bbf09620e206e7d0c27a"
今回のケースでは、Podのcgroupパスは、kubepods/podd7f4b509-cf94-4951-9417-d1087c92a5b2
となります。メモリーのPodレベルのcgroupの設定を確認しましょう。
# PodがスケジュールされているNodeで実行
# また、Podに割り当てられたcgroupと同じ名前に変更
cat /sys/fs/cgroup/memory/kubepods/podd7f4b509-cf94-4951-9417-d1087c92a5b2/memory.limit_in_bytes
予想通り320MiBです。
335544320
Observability
Podのオーバヘッドが利用されているタイミングを特定し、定義されたオーバーヘッドで実行されているワークロードの安定性を観察するため、kube-state-metricsにはkube_pod_overhead
というメトリクスが用意されています。この機能はv1.9のkube-state-metricsでは利用できませんが、次のリリースで期待されています。それまでは、kube-state-metricsをソースからビルドする必要があります。