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トポロジーを意識したルーティング

Topology Aware Routingは、ネットワークトラフィックを発信元のゾーン内に留めておくのに役立つメカニズムを提供します。クラスター内のPod間で同じゾーンのトラフィックを優先することで、信頼性、パフォーマンス(ネットワークの待ち時間やスループット)の向上、またはコストの削減に役立ちます。
FEATURE STATE: Kubernetes v1.23 [beta]

Topology Aware Routingは、トラフィックを発信元のゾーンに維持するようにルーティング動作を調整します。場合によっては、コストを削減したり、ネットワークパフォーマンスを向上させたりすることができます。

動機

Kubernetesクラスターは、マルチゾーン環境で展開されることが多くなっています。 Topology Aware Routingは、トラフィックを発信元のゾーン内に留めておくのに役立つメカニズムを提供します。EndpointSliceコントローラーはServiceのendpointを計算する際に、各endpointのトポロジー(リージョンとゾーン)を考慮し、ゾーンに割り当てるためのヒントフィールドに値を入力します。kube-proxyのようなクラスターコンポーネントは、次にこれらのヒントを消費し、それらを使用してトラフィックがルーティングされる方法に影響を与えることが可能です(トポロジー的に近いendpointを優先します)。

Topology Aware Routingを有効にする

service.kubernetes.io/topology-modeアノテーションをautoに設定すると、サービスに対してTopology Aware Routingを有効にすることができます。各ゾーンに十分なendpointがある場合、個々のendpointを特定のゾーンに割り当てるために、トポロジーヒントがEndpointSliceに入力され、その結果、トラフィックは発信元の近くにルーティングされます。

最も効果的なとき

この機能は、次の場合に最も効果的に動作します。

1. 受信トラフィックが均等に分散されている

トラフィックの大部分が単一のゾーンから発信されている場合、トラフィックはそのゾーンに割り当てられたendpointのサブセットに過負荷を与える可能性があります。受信トラフィックが単一のゾーンから発信されることが予想される場合、この機能は推奨されません。

2. 1つのゾーンに3つ以上のendpointを持つサービス

3つのゾーンからなるクラスターでは、これは9つ以上のendpointがあることを意味します。ゾーン毎のendpointが3つ未満の場合、EndpointSliceコントローラーはendpointを均等に割り当てることができず、代わりにデフォルトのクラスター全体のルーティングアプローチに戻る可能性が高く(約50%)なります。

使い方

「Auto」ヒューリスティックは、各ゾーンに多数のendpointを比例的に割り当てようとします。このヒューリスティックは、非常に多くのendpointを持つサービスに最適です。

EndpointSliceコントローラー

このヒューリスティックが有効な場合、EndpointSliceコントローラーはEndpointSliceにヒントを設定する役割を担います。コントローラーは、各ゾーンに比例した量のendpointを割り当てます。この割合は、そのゾーンで実行されているノードの割り当て可能なCPUコアを基に決定されます。

たとえば、あるゾーンに2つのCPUコアがあり、別のゾーンに1つのCPUコアしかない場合、コントローラーは2つのCPUコアを持つゾーンに2倍のendpointを割り当てます。

次の例は、ヒントが入力されたときのEndpointSliceの様子を示しています。

apiVersion: discovery.k8s.io/v1
kind: EndpointSlice
metadata:
  name: example-hints
  labels:
    kubernetes.io/service-name: example-svc
addressType: IPv4
ports:
  - name: http
    protocol: TCP
    port: 80
endpoints:
  - addresses:
      - "10.1.2.3"
    conditions:
      ready: true
    hostname: pod-1
    zone: zone-a
    hints:
      forZones:
        - name: "zone-a"

kube-proxy

kube-proxyは、EndpointSliceコントローラーによって設定されたヒントに基づいて、ルーティング先のendpointをフィルター処理します。ほとんどの場合、これはkube-proxyが同じゾーン内のendpointにトラフィックをルーティングできることを意味します。コントローラーが別のゾーンからendpointを割り当てて、ゾーン間でendpointがより均等に分散されるようにする場合があります。これにより、一部のトラフィックが他のゾーンにルーティングされます。

セーフガード

各ノードのKubernetesコントロールプレーンとkube-proxyは、Topology Aware Hintを使用する前に、いくつかのセーフガードルールを適用します。これらがチェックアウトされない場合、kube-proxyは、ゾーンに関係なく、クラスター内のどこからでもendpointを選択します。

  1. endpointの数が不十分です: クラスター内のゾーンよりもendpointが少ない場合、コントローラーはヒントを割り当てません。

  2. バランスの取れた割り当てを実現できません: 場合によっては、ゾーン間でendpointのバランスの取れた割り当てを実現できないことがあります。たとえば、ゾーンaがゾーンbの2倍の大きさであるが、endpointが2つしかない場合、ゾーンaに割り当てられたendpointはゾーンbの2倍のトラフィックを受信する可能性があります。この「予想される過負荷」値が各ゾーンの許容しきい値を下回ることができない場合、コントローラーはヒントを割り当てません。重要なことに、これはリアルタイムのフィードバックに基づいていません。それでも、個々のendpointが過負荷になる可能性があります。

  3. 1つ以上のノードの情報が不十分です: ノードにtopology.kubernetes.io/zoneラベルがないか、割り当て可能なCPUの値を報告していない場合、コントロールプレーンはtopology-aware endpoint hintsを設定しないため、kube-proxyはendpointをゾーンでフィルタリングしません。

  4. 1つ以上のendpointにゾーンヒントが存在しません: これが発生すると、kube-proxyはTopology Aware Hintから、またはTopology Aware Hintへの移行が進行中であると見なします。この状態のサービスに対してendpointをフィルタリングすることは危険であるため、kube-proxyはすべてのendpointを使用するようにフォールバックします。

  5. ゾーンはヒントで表されません: kube-proxyが、実行中のゾーンをターゲットとするヒントを持つendpointを1つも見つけることができない場合、すべてのゾーンのendpointを使用することになります。これは既存のクラスターに新しいゾーンを追加するときに発生する可能性が最も高くなります。

制約事項

  • ServiceでexternalTrafficPolicyまたはinternalTrafficPolicyLocalに設定されている場合、Topology Aware Hintは使用されません。同じServiceではなく、異なるServiceの同じクラスターで両方の機能を使用することができます。

  • このアプローチは、ゾーンのサブセットから発信されるトラフィックの割合が高いサービスではうまく機能しません。代わりに、これは着信トラフィックが各ゾーンのノードの容量にほぼ比例することを前提としています。

  • EndpointSliceコントローラーは、各ゾーンの比率を計算するときに、準備ができていないノードを無視します。ノードの大部分の準備ができていない場合、これは意図しない結果をもたらす可能性があります。

  • EndpointSliceコントローラーは、node-role.kubernetes.io/control-planeまたはnode-role.kubernetes.io/masterラベルが設定されたノードを無視します。それらのノードでワークロードが実行されている場合、これは問題になる可能性があります。

  • EndpointSliceコントローラーは、各ゾーンの比率を計算するデプロイ時にtolerationを考慮しません。サービスをバックアップするPodがクラスター内のノードのサブセットに制限されている場合、これは考慮されません。

  • これはオートスケーリングと相性が悪いかもしれません。例えば、多くのトラフィックが1つのゾーンから発信されている場合、そのゾーンに割り当てられたendpointのみがそのトラフィックを処理することになります。その結果、Horizontal Pod Autoscalerがこのイベントを拾えなくなったり、新しく追加されたPodが別のゾーンで開始されたりする可能性があります。

カスタムヒューリスティック

Kubernetesは様々な方法でデブロイされ、endpointをゾーンに割り当てるための単独のヒューリスティックは、すべてのユースケースに通用するわけではありません。 この機能の主な目的は、内蔵のヒューリスティックがユースケースに合わない場合に、カスタムヒューリスティックを開発できるようにすることです。カスタムヒューリスティックを有効にするための最初のステップは、1.27リリースに含まれています。これは限定的な実装であり、関連する妥当と思われる状況をまだカバーしていない可能性があります。

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